頭のケガ
このページを書いた人:院長 西山 淳
- 日本脳神経外科学会認定 脳神経外科専門医・指導医
- 日本脳卒中学会認定 脳卒中専門医・指導医
- 日本がん治療認定機構認定 がん治療認定医
- 日本認知症学会認定 認知症専門医・指導医
- 日本神経内視鏡学会認定 技術認定医
- 日本脳神経外傷学会認定医 神経外傷専門医・指導医・評議員
- 日本頭痛学会認定 頭痛専門医・指導医・代議員
- 日本医師会認定 産業医
頭部打撲・頭部外傷
転倒やスポーツ、交通事故などで起こる頭部打撲は誰にでも起こりうるもので、大人や子ども、高齢者を問わず注意が必要です。
ここでは、受診の目安や危険な症状、年齢層ごとの注意点についてご説明します。
受診する目安
症状は一見軽く見える場合もありますが、放置すると重大な結果を引き起こす可能性もあります。
以下の症状がある場合、医療機関を受診しておくことをおすすめします。
頭痛が続く
軽度の打撲であれば数日で治ることが多いですが、頭痛が長引いたり悪化する場合は脳に異常がある可能性があります。
吐き気や嘔吐
子どもの場合、ストレスで吐き気や嘔吐を起こすことがありますが、水分・糖分を摂っても改善しない場合は受診してください。
高齢者で吐き気や意識のぼんやりが見られる場合、頭蓋内出血の可能性があるため、救急対応が必要です。
意識がぼんやりする・しびれ
意識がぼんやりしたり、しびれ、視覚や聴覚の異常がある場合は脳への影響が疑われます。
ふらつきや歩行の異常
特に子どもや高齢者では神経系の異常が考えられるため、医師に相談してください。
危険な症状
以下の症状が見られた場合、すぐに医療機関を受診してください。
一時的な意識喪失
けいれん発作
激しい頭痛
普段と違う言動や行動
持続する意識障害や繰り返す嘔吐
打撲が原因で引き起こされる病気
脳震盪(のうしんとう)
脳が揺れることで起こる軽度の症状ですが、繰り返し発生すると後遺症につながる場合があります。
外傷性頭蓋内出血(がいしょうせいずがいないしゅっけつ)
怪我によって頭の中で出血が起きる状態を指します。
早急な治療が必要な場合もあり、命を救うための手術が必要になることも。
外傷性脳損傷(がいしょうせいのうそんしょう)
激しい衝撃で脳が直接ダメージを受ける状態で、記憶障害や認知機能の低下など、長期間にわたる影響を及ぼすことがあります。
さらに、頭のけがによる出血や脳の腫れが原因で、頭の中の圧力が上がり、二次的な脳の損傷を引き起こすこともあります。
急性硬膜下血腫(きゅうせいこうまくかけっしゅ)
脳の表面と硬膜(脳を包む膜)の間に血がたまり、脳が圧迫される状態です。
命に関わる危険な症状であり、早急な医療対応が必要です。
処置や治療法
応急処置
軽度の打撲であれば、打った部位を冷やすことで腫れや痛みを抑えられます。
経過観察
軽度の打撲では特別な処置が必要ないこともありますが、打撲後しばらくは経過観察が重要です。
一般的には24時間、特に怪我をしてから6時間以内は要注意経過観察の時間です。
血行が良くなることは避けてください。
スポーツや入浴、飲酒は同日は避けていただくことが望ましいです。
薬物療法
頭痛や炎症を抑えるために鎮痛薬や抗炎症薬が使用されることがあります。
子供の頭部打撲
子供は成長段階にあり、頭蓋骨や脳が柔らかく打撲の影響が出やすいことがあるため、特に注意が必要です。
観察が重要
打撲後、すぐには症状が現れない場合でも数時間後や翌日に異変が生じることがあります。
泣き止まない、元気がない
打撲後に泣き続けたり、普段と違う泣き方をしたり、普段と違うほどぐったりしている場合は、脳への影響が疑われます。
繰り返し吐く
吐き気は一般的ですが、何度も吐く場合は早めに医師の診察を受けてください。
夜間のチェック
子供は打撲後に眠りがちになることもありますが、夜間も様子を確認し、異常があれば受診してください。
再発防止
子供は自分で危険予測ができないため、再発防止のために、パズルマットやクッション、サークルやゲートの設置など、再発予防に努めましょう。
小学生~成人のスポーツ頭部外傷
スポーツ頭部外傷とは、運動やスポーツ中に頭部に外力が加わることで起こる怪我や障害の総称です。
特に衝突の多いスポーツ(ラグビー、ボクシング、サッカーなど)や転倒リスクの高い競技(スキー、スノーボード、体操など)では注意が必要です。
一瞬の意識消失や意識もうろう、記憶障害には要注意
強い脳への外力が加わり、脳震盪を伴っている可能性が高いです。
必ず医療機関受診をしてください。
セカンドインパクトシンドローム
頭のけがをした際、意識が消失したかどうか、どれくらい続いたか、また、それが初回か再発かによって、症状が改善した後に競技へ復帰できるタイミングが決まります。
具体的な基準は各スポーツ団体によって異なりますが、「段階的競技復帰マニュアル」が設けられています。
必ず所属する団体の指示に従うようにしてください。
脳が十分に回復していない状態で競技に復帰し、再び同じような衝撃を受けると、防御反応が遅れやすくなり、初回よりも大きなダメージが脳に加わる可能性があります。
その結果、深刻な後遺症が残ることや命に関わる事態につながることがあります。
十分に休養をとり、安全を優先してください。
高齢者の頭部打撲
高齢者は、骨や筋肉が弱くなっていたり血管が脆くなっていたりするため、特に注意が必要です。
服用している薬の影響で出血しやすい状態になっていることも多いため、軽い打撲でも出血する可能性が高くなります。
早めに医療機関を受診するようにしましょう。
軽い打撲でも油断しない
高齢者は若い人と比べて回復が遅く、軽度の打撲でも大事に至ることがあります。
受傷後、数週間から数か月かけて、じわじわ脳表に血液がたまる慢性硬膜下血腫など、数週間後に症状が現れることもあるため注意が必要です。
特に、血液疾患をお持ちの方や、血液をサラサラにする薬を内服されておられる方は慢性硬膜下血腫合併リスクが上がりますので、要注意です。
普段と違う行動が見られる場合
ご高齢の方は、認知機能の低下などにより、ご自身の症状の訴えが明瞭にできないことが珍しくありません。
頭を打った後に、言葉が出にくくなる、もの忘れが増える、混乱した様子があるなど、普段と違う行動が見られる場合は早急に診察を受けましょう。
転倒・転落予防
家の中の段差や滑りやすい場所に注意し、手すりを設置するなどの対策を講じましょう。
また、転倒の原因が高齢者てんかんや不整脈など、内科的疾患が転倒転落の原因となっている可能性もあります。
疑わしい場合は内科的精査も必要です。
当院の外来診療
月曜日の午後と土曜日に外来診療を行っております。(※今後、診療枠を拡大予定)
ご質問や受診すべきかのご相談なども、いつでもお気軽にご連絡ください。
また、系列の「えびな脳神経クリニック」では祝日以外は毎日診察をしており、当日の予約外受診も可能です。