もの忘れ
このページを書いた人:院長 西山 淳
- 日本脳神経外科学会認定 脳神経外科専門医・指導医
- 日本脳卒中学会認定 脳卒中専門医・指導医
- 日本がん治療認定機構認定 がん治療認定医
- 日本認知症学会認定 認知症専門医・指導医
- 日本神経内視鏡学会認定 技術認定医
- 日本脳神経外傷学会認定医 神経外傷専門医・指導医・評議員
- 日本頭痛学会認定 頭痛専門医・指導医・代議員
- 日本医師会認定 産業医
「最近、同じ話を何度もしてしまう」
「どこに置いたか忘れてしまうことが増えた」
こうした"もの忘れ"は、誰もが経験するものですが、場合によっては加齢による正常な変化を超え、病的な兆候である可能性があります。
特に、認知症の早期兆候として現れることが多いため、適切な診断と対応が必要です。
もの忘れの症状
日常的なもの忘れ
- 忘れていたことを思い出すのに時間がかかる。
- 予定や約束を一時的に忘れるが、ヒントがあれば思い出せる。
病的なもの忘れ(認知症の疑い)
- 新しい情報を覚えられない。
- 時間や場所、人の区別がつかなくなる(見当識障害)。
- 食事をしたこと自体を忘れてしまう。
- 同じ質問や会話を繰り返す。
- 財布や鍵などを不適切な場所に置いてしまう(例:冷蔵庫やトイレ)
日常的なもの忘れと認知症の違い
もの忘れは、誰にでも起こりうる日常的な現象ですが、認知症ではもの忘れの程度や日常生活への影響が大きく異なります。
日常的なもの忘れは、軽微なものでヒントがあれば思い出すことができます。
一方、認知症によるもの忘れは、記憶力の低下に加え、判断力や生活能力が低下し、介護が必要になります。
家族が注意すべきサイン
家族が気づきやすい「もの忘れ」の主な兆候は以下の項目です。
当てはまる場合や家族の症状について気になる場合は専門医に相談しましょう。
- 同じ質問や会話を繰り返す。
- 日常的な行動(料理や支払いなど)にミスが増える。
- これまで問題なく使えていた家電や道具の使い方がわからなくなる。
- 時間や場所の感覚が混乱する。
軽度認知障害(MCI)
認知症の前段階として注目されているのが、軽度認知障害(MCI: Mild Cognitive Impairment)です。
MCIは、記憶力や認知機能が低下しているものの、日常生活には大きな支障をきたしていない状態を指します。
早期に適切な対応を行うことで、認知症への進行を遅らせたり防いだりできる可能性があります。
一度MCIと診断された後に認知機能が正常な状態へと回復する確率は16~41%ほどといわれています。
放置するのではなく、積極的に診断と治療を受けることが勧められます。
もの忘れの原因
もの忘れの原因は大きく分けて3つあります。
加齢によるもの
加齢に伴い、誰もが経験するもの忘れです。
- 情報を思い出すのに時間がかかる
- 日常生活に支障をきたさない軽微な変化
認知症によるもの
認知症は、脳の疾患が原因で記憶力、思考力、判断力が低下する状態を指します。
主要な認知症は以下の通りです。
アルツハイマー型認知症
脳内に異常なたんぱく質(アミロイドβやタウ)が蓄積することで、神経細胞が徐々に破壊されます。
初期には記憶障害が顕著で、進行すると判断力や行動にも影響が及びます。
血管性認知症
脳卒中(脳梗塞や脳出血)による脳血流の障害が原因です。
部分的な認知機能の低下に加え、麻痺や言語障害などの症状が現れる場合もあります。
レビー小体型認知症
幻視(実在しない物が見える)、注意力の変動、手足の震えや筋肉の硬直(パーキンソン症状)が特徴です。
進行すると記憶力や判断力が低下します。
前頭側頭型認知症
記憶力よりも行動や人格の変化が顕著です。
例として、無謀な行動や社会的配慮の欠如が挙げられます。
その他の疾患や要因によるもの
認知症以外の原因で、もの忘れを引き起こす疾患や要因も存在します。
これらの多くは治療が可能であり、早期発見が重要です。
脳腫瘍、正常圧水頭症、頭部外傷
脳の物理的な損傷や圧迫が原因となる場合があります。
特に正常圧水頭症は、適切な治療によって症状が改善する可能性が高い疾患です。
ストレスやうつ病
精神的な負担が原因で、一時的に記憶力や集中力が低下することがあります。
ストレス管理や適切な治療で改善が期待されます。
甲状腺機能低下症
甲状腺ホルモンの不足が脳の代謝に影響を及ぼし、記憶力の低下を引き起こします。
睡眠不足や睡眠時無呼吸症候群
質の悪い睡眠や酸素不足が脳機能を低下させる場合があります。
専門医による診断と治療で改善が期待されます。
生活習慣病(糖尿病や高血圧)
糖尿病や高血圧による血管障害が脳の血流を低下させ、記憶力や認知機能に影響を与えることがあります。
薬剤性のもの忘れ
抗うつ薬や睡眠薬などの一部の薬剤が原因で、記憶や注意力が低下する場合があります。
医師に相談することで適切な対応が可能です。
もの忘れの症状があっても、それが必ずしも認知症に直結するわけではありません。
適切な治療や生活習慣の見直しによって改善が期待できる場合もあるため、早期に医療機関を受診し、専門医の診断を受けることが大切です。
対処法や予防法
予防法
有酸素運動
ウォーキングや軽いジョギングを定期的に行うことで、脳への血流を促進します。
バランスの取れた食事
野菜や魚を中心とした地中海食が推奨されます。特にDHAやEPA、ビタミンB群を含む食品が脳の健康に寄与します。
社会的活動
人との交流や地域活動に積極的に参加することで、認知機能の低下を抑える効果が期待されます。
知的活動
読書、計算、パズルなどの脳トレーニングを行うことが推奨されています。
症状がある場合の対策
記録の習慣化
メモ帳やカレンダーを活用して予定を管理します。
家族や専門家への相談
症状が気になる場合は、一人で抱え込まず、適切な相談窓口への相談や早めに専門医療機関を受診しましょう。
相談窓口のご案内
同法人のえびな脳神経クリニックは神奈川県の認知症疾患医療センター、海老名市の認知症初期集中支援チーム事業を受託しています。
認知症の専門医療機関として、もの忘れ・認知症全般に関する電話での無料相談を行っています。
専用ダイヤル:046-204-8817
- いきなり病院に行くのは少し怖い
- 親の物忘れが進んでいるが、受診を嫌がっている
- 親の症状は認知症なのかわからない
- 家族に認知症の兆候があるかもしれないが、何から始めればいいかわからない
- 認知症の家族への接し方が難しい
など、どんなご相談でもかまいません。
<えび脳ホームページ>
認知症疾患医療センター
<神奈川県公式ホームページ>
認知症の相談窓口
診療の流れ
受診時に必要な情報や準備
診療をスムーズに進めるため、受診前に以下の情報を準備しておくことをおすすめします。
症状の記録
症状がいつから始まったのか、どの程度の頻度で起きるのか、きっかけとなる出来事があれば記録しておきましょう。
現在服用している薬のリスト
処方薬、市販薬、サプリメントも含め、服用中の薬をリスト化して持参してください。
生活習慣の状況
睡眠、食事、運動習慣、社会活動の有無を確認し、診察時に伝えられるようにしておきます。
家族の観察ポイント
家族が気づいた症状や行動の変化も診断の重要な手がかりになります。
問診
記憶障害の始まりや症状の頻度、生活への影響を伺います。
ご家族からの情報提供も重要です。
認知機能検査
MMSEやMoCA-Jなど、簡易的な検査を実施し、認知機能の状態を評価します。
画像診断
MRIやCTで脳の構造を確認し、血管障害や脳萎縮の有無を調べます。
血液検査
栄養状態や甲状腺ホルモン、感染症の有無を調べます。
診断後の対応
必要に応じて薬物療法(ドネペジル、メマンチンなど)を開始し、生活指導を行います。
まとめ
もの忘れは、加齢による正常な変化と病的なものが混在している場合があります。
特に認知症の初期兆候であれば、早期診断と治療が進行を抑える鍵となります。
「これは普通のこと?」と気になった際は、近隣の専門医がいる医療機関の受診をおすすめいたします。
日本認知症学会ホームページから専門医検索が可能ですので、ぜひご活用ください。
日本認知症学会
当院近隣の場合はぜひお気軽にご相談ください。
【参照】日本神経学会
もの忘れに関するよくある質問
Q1: 年齢が上がると必ずもの忘れが増えますか?
A: 加齢に伴い、記憶力が低下することは一般的ですが、病的なもの忘れではありません。
日常生活に支障が出る場合は、医療機関を受診してください。
Q2: 認知症と年相応のもの忘れはどう違いますか?
A: 年相応のもの忘れは、情報を思い出すのに時間がかかる程度ですが、認知症は記憶そのものが失われたり、判断力や行動にも影響が出たりします。
Q3: もの忘れがあると必ず認知症ですか?
A: もの忘れは必ずしも認知症の兆候とは限りません。
ストレスや睡眠不足、薬剤の副作用などが原因の場合もあります。適切な検査を受けて原因を特定することが重要です。
Q4: もの忘れがある場合、すぐに医療機関を受診するべきですか?
A: 日常生活に支障をきたさない程度のもの忘れは、年齢に伴う正常な変化の可能性があります。
しかし、同じことを何度も繰り返したり、直前の出来事を思い出せなかったりする場合は、早めに専門医に相談することをおすすめします。
Q5: 早めに診断を受けるメリットは?
A: 早期発見により、進行を遅らせる治療が可能な場合があります。
また、専門的なアドバイスを受けることで、生活の中で適切なサポートやサービスを開始することができます。
Q6: 診察に行く際、どのような準備が必要ですか?
A: 症状の記録(いつから、どのような状況で起こるか)、服用している薬のリスト、生活習慣(睡眠、食事、運動など)の状況を準備しておくと、診察がスムーズに進みます。
また、家族が気づいた変化があれば、それも医師に伝えるとよいでしょう。
Q7: 家族がもの忘れに気づいたとき、どう対処すればいいですか?
A: 家族が気づいた場合、症状を責めずに見守りながら記録をつけることが大切です。
早めに医療機関を受診し、専門医の診断を受けることで、適切な治療やサポートが受けられます。
Q8: 認知症は治りますか?
A: 現時点では認知症を完全に治す治療法はありませんが、進行を遅らせたり、症状を軽減する治療は可能です。
早期発見が重要です。
Q9: 診断後に治療が必要な場合、どのような選択肢がありますか?
A: 診断結果に応じて、薬物療法(例:ドネペジル、メマンチンなど)や生活習慣の改善、リハビリテーションが提案されることがあります。
早期診断により進行を抑えることが可能な場合もあります。
Q10: 医療機関を受診する前に相談するだけでも大丈夫ですか?
A: もちろんです。
症状が認知症かどうか迷っている場合や、家族の症状について不安がある場合など、まずは無料相談窓口や医療機関に相談することをおすすめします。
神奈川県央地域にお住いの方は、同法人のえびな脳神経クリニックで認知症の専門医療機関として、もの忘れ・認知症全般に関する電話での無料相談を行っています。
専用ダイヤル:046-204-8817
<えび脳ホームページ>
認知症疾患医療センター
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