片頭痛
このページを書いた人:院長 西山 淳
- 日本脳神経外科学会認定 脳神経外科専門医・指導医
- 日本脳卒中学会認定 脳卒中専門医・指導医
- 日本がん治療認定機構認定 がん治療認定医
- 日本認知症学会認定 認知症専門医・指導医
- 日本神経内視鏡学会認定 技術認定医
- 日本脳神経外傷学会認定医 神経外傷専門医・指導医・評議員
- 日本頭痛学会認定 頭痛専門医・指導医・代議員
- 日本医師会認定 産業医
片頭痛は、頭の片側または両側にズキズキとした痛みが現れる慢性頭痛の一種です。
日常生活に支障をきたす一次性頭痛(脳や体に病気がないのに起こる頭痛)の中でも最も多く、日本人の約8.4%が経験するとされています。
特に30~40代の女性に多いですが、男性や子どもにも発症することがあります。
片頭痛の症状
症状一覧 | 説明 |
---|---|
ズキズキと脈打つような頭痛 | 頭の片側または両側に、拍動性の痛みが現れることが多い。 |
吐き気や嘔吐 | 頭痛と同時に気持ち悪さや嘔吐を伴うことがある。 |
光過敏・音過敏 | 光や音が通常よりも不快に感じ、暗く静かな場所を求める。 |
嗅覚過敏 | 特定の匂い(香水、タバコなど)に敏感になる。 |
前兆 | 視覚異常や感覚異常が頭痛の前に現れることがある(約20%)。 |
片頭痛の頭痛は通常4~72時間続きますが、小児では2~72時間の場合もあります。
発症頻度や症状の重さは個人差があります。
ズキズキと脈打つような頭痛(拍動性の頭痛)
痛みは頭の片側に現れることが多いですが、両側に及ぶ場合もあります。
日常的な動作(歩行や階段の上り下りなど)で悪化することがあります。
吐き気や嘔吐
頭痛とともに、気持ち悪さや嘔吐を伴う場合があります。
光や音への過敏性(光過敏・音過敏)
光や音が通常よりも不快に感じることがあり、静かな暗い場所で休むことを求める人が多いです。
匂いへの過敏性(嗅覚過敏)
特定の匂い(香水、タバコ、強い食べ物の匂いなど)に対して非常に敏感になる場合があります。
片頭痛患者さんの中であまり多くは見られない症状ですが、これがある場合は片頭痛の可能性が高い特徴的な症状といえます。
前兆
約20%の患者には、視覚の異常(キラキラした光やギザギザの線が見える)や感覚異常(しびれやチクチクした感覚)が頭痛の前に現れることがあります。
片頭痛の原因
片頭痛の正確な原因は完全には解明されていませんが、以下の要因が関与していると考えられています。
脳の血管の変化
片頭痛は、脳の血管が収縮した後に拡張する際に引き起こされるとされています。
神経伝達物質の異常
特にセロトニンという物質が関与しており、この物質の変動が片頭痛を誘発する可能性があります。
遺伝的要因
家族に片頭痛を持つ人がいる場合、発症リスクが高まるとされています。
誘因(トリガー)
以下のような要因が片頭痛を引き起こすきっかけになる場合があります。
トリガー | 詳細 |
---|---|
睡眠不足・過剰な睡眠 | 不規則な睡眠パターンが片頭痛を引き起こす場合がある。 |
ストレス | 強いストレスや、ストレスから解放されたとき。 |
天候の変化 | 気圧の低下や季節の変わり目。 |
食品 | チョコレート、赤ワイン、チーズなどがきっかけになることがある。 |
ホルモンの変動 | 女性の場合、月経周期による影響が大きい。 |
対処法や予防法
片頭痛に悩まされている方にとって、効果的な対処法や予防法を知ることは非常に重要です。
片頭痛の治療は、発作の症状を緩和するための急性期治療と、発作の頻度や重症度を減少させるための予防治療に分けられます。
急性期治療
症状が出た際に使用する薬です。
市販薬が効かない場合でも、医師から処方される専用の薬で改善が期待できます。
トリプタン系薬剤
片頭痛専用の薬で、発作が始まった際に使用します。
片頭痛による血管拡張を収縮させ、神経伝達物質であるセロトニンの作用を調整することによって、片頭痛の痛みを軽減します。
具体的な薬剤には、スマトリプタン、ゾルミトリプタン、リザトリプタンなどがあります。
ジタン系
ジタン系薬剤は、トリプタン系薬剤とは異なるメカニズムで効果を発揮します。
主にセロトニンの2型受容体に作用し、血管を収縮させて痛みを和らげます。
これにより、トリプタン系薬剤が効かない場合や、副作用を避けたい場合に選ばれることがあります。
具体的な薬剤には、レイボーなどがあります。
鎮痛薬
アセトアミノフェンやNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)が軽度から中等度の片頭痛に効果的です。
ただし、過剰使用は薬物乱用頭痛を引き起こすリスクがあるため注意が必要です。
予防治療
症状が月に4回以上発生する場合は予防治療が推奨されます。
予防薬
β遮断薬(プロプラノロール)、カルシウム拮抗薬、抗うつ薬、抗てんかん薬などが使用されることがあります。
抗CGRP関連抗体薬
最近の治療法として、CGRP(片頭痛に関与する分子)の活性を抑える薬剤が登場しており、当院でも対応しています。
生活習慣の改善
- 規則正しい睡眠と食事を心掛ける
- 日記をつけてトリガーを特定し、避ける
- 適度な運動を行い、ストレスを軽減する
診療の流れ
以下のような診療の流れで適切な診断と治療が行われます。
問診
症状の発生頻度、痛みの強さ、発作の持続時間、誘因となる要素(トリガー)について詳しく伺います。
家族歴や日常生活の状況も確認します。
身体検査
必要に応じて神経学的検査などを行い、片頭痛以外の原因がないかを確認します。
画像検査
必要に応じてMRIやCT検査を行い、脳内の異常を確認します。
片頭痛と診断される場合は、他の病気が否定された後に行われます。
診断
国際頭痛分類第3版(ICHD-3)の診断基準に基づいて片頭痛であるかを判断します。
国際頭痛分類第3版(ICHD-3)の診断基準
国際頭痛分類第3版(ICHD-3)の診断基準に基づく片頭痛の診断は、片頭痛のタイプによって異なります。
以下にそれぞれの具体的な診断基準を示します。
前兆を伴わない片頭痛(ICHD-3のコード 1.1)
診断基準
-
少なくとも5回の頭痛発作が以下の基準を満たす
-
発作が治療されない場合、4時間から72時間続く
-
頭痛は以下のうち少なくとも2つの特徴を持つ
・片側性
(頭の片側に限定される)・拍動性
(ズキズキと脈打つような痛み)・中等度から重度の強さ
(通常の活動が困難になる)・日常的な身体活動で悪化
(歩行や階段の昇降で痛みが増す) -
頭痛中に以下の少なくとも1つを伴う
・吐き気または嘔吐
・光過敏または音過敏
-
他の疾患による説明ができない(画像検査などで二次性頭痛が否定されている)
前兆を伴う片頭痛(ICHD-3のコード 1.2)
診断基準
-
少なくとも2回の発作が以下の基準を満たす
-
前兆が以下の特徴を持つ
一時的で完全に可逆的な以下のいずれか、または複数の症状がある症状の種類 具体例 視覚症状 キラキラした光、ギザギザの線、視野欠損など。 感覚症状 手足のしびれやチクチクする感覚。 言語症状 一時的な話しにくさ。 運動症状 一時的な筋力低下、片側の身体が動かしにくい。 脳幹症状 めまい、平衡感覚の喪失、意識混濁。 網膜症状 片側の視力低下または一時的な失明。 -
前兆症状が徐々に発展し、少なくとも1つが5分以上かかる
・前兆症状が徐々に発展し、各症状が少なくとも1つは5分以上、最大60分以内にかけて進行する
・前兆症状の全体的な持続時間が60分以内である
・前兆の発生から60分以内に頭痛が始まる場合が多いが、前兆のみで頭痛が現れないこともある
-
他の疾患による説明ができない
治療方針の決定
症状に応じた薬物療法や生活指導を行い、患者さまに最適な治療計画を提案します。
まとめ
片頭痛は、適切な治療と予防策を講じることでコントロールが可能です。
そのためには、頭痛専門医による正確な診断が必要です。
市販薬やとりあえずの対処療法だけで対応していると、薬物過多による頭痛や慢性片頭痛に移行してしまう可能性があります。
頭痛にお困りの際は早めに、近隣の頭痛専門医がいる医療機関の受診をおすすめいたします。
当院近隣の場合はいつでもご相談ください。
日本頭痛学会ホームページから頭痛専門医検索が可能です。ぜひご活用ください。
日本頭痛学会
認定頭痛専門医一覧:https://www.jhsnet.net/ichiran.html
【参照】日本頭痛学会