人の命を救うことについて、考えてみました。
これまで私は色んな人に支えられながら18年間医師をやってきましたが、幸いなことに、いろんな方々に、面と向かって「ありがとう」と言っていただける機会に恵まれていたと思われます。
でも、医学や医療はまだまだ発展途上のもので、神様の御業ではないので、残念ながら、病気やケガが治らない、副作用が合併症を呈してしまった、場合によっては、力及ばず、お亡くなりになられることも珍しい話ではないのが現実というところで、その都度、我々医療者は「もっと何ができただろうか」と考えるわけです。
患者さんは「病気や怪我を治して欲しい」と様々な形で受診されますが、でも、結果はご希望に添えない経過をたどる場合もある。
となると、その差を何で埋めるのか、という話になってきます。
その答えは、いまだに模索中ですが、私の18年間やってきた今の時点での暫定の解答としては「患者さんやご家族様の納得」ということかなと、仮の答えをここでは挙げておきますが、この答えは100点の答えを達成することは一生難しいと思ってます。
もし、医学や医療が神様の御業であるなら、人の死因は老衰と外傷のみになってしまうのかもしれません。
それでも、そうなる日を目指して、無数の研究者の先生方は日々、試行錯誤と綿密な計画と激しい競争の世界で戦い、創薬や新規治療の研究開発を行っております。
iPS細胞開発の山中先生もそのお一人ですが、一人の医師が一生の間に救える(向き合える)患者さんの人数はせいぜい1万人前後と仮に考えれば、創薬や新規治療の開発だとその何十倍の患者さんを救えるかもしれないと想像してみるわけです。
だから、もっともっと、光がまだまだ当たっていないところで、新しい治療を開発した方々に現場の感謝の声が直接届くと良いですよね。
あと、結構見落とされがちになるのは、後進教育です。
これについても一人の医師が一生の間に救える患者さんの人数は限られてしまいますが、後進教育を行って、技術や知識の継承、そして何より情熱の伝播は、良医を育て、何倍もの患者さんに恩恵をもたらすことを実現できるのかもしれません。
人の命の救い方にはいろんな救い方がある。
でも、それには、我々医師だけではなくて、看護師、放射線技師、医療工学技士、栄養士、リハビリ療法技師、薬剤師(病院やクリニックや薬局の薬剤師さんだけではなくて、製薬会社のstaffさんも含めて)、医療事務、ソーシャルワーカーを含めて、医療に携わるすべての人の力が不可欠で、突き詰めて言えば、我々が気持ちよく清潔な環境下で医療提供が出来るように清掃をしてくれる方も、間接的かもしれませんが、命を救うことに携わっているということだと私は考えています。
私は、大学病院退職後、現在も大学病院で非常勤で働かせてもらっておりますが、なかなか創薬や新規治療研究の分野、病態解明には力及ばずでありましたので、日々、目の前にある命とただただ向き合い、後進育成に注力して参りました。
そのスタンスは今も変わらずで、そして、今に活きております。
母校である東海大学医学部は「良医育成」がスローガンで、医学教育に取り組んでおります。
今後も、この海老名を中心とする県央地区に多くの卒業生が携わり、地域の方に納得していただけるような医療の展開をしてもらえたらな、と、ふと今思ったので、ブログに綴ってみました。
今後ともご指導ご鞭撻のほど宜しくお願いいたします。